<はじめに>
○ おはようございます!
○ 年度末の大変お忙しいなか、損保労連第47回中央委員会にお集まりいただき、誠にありがとうございます。
○ 審議に先立ちまして、ごあいさつ申し上げます。
<日本興亜情報サービス労組の損保労連加入>
○ まずは第1号議案でご審議いただいた、日本興亜情報サービス労組の損保労連加入について、損保労連を代表して、心より歓迎し、お祝いを申し上げるとともに、ここにいる全員で新しい仲間が増えた喜びを分かちあいたいと思います。
○ 本当におめでとうございます。
○ ここに至るまで強力なリーダーシップを発揮され、組織をリードしてこられた日本興亜情報サービス労組、磯島委員長、小川書記長はじめ執行部の皆さんに対して、あらためて敬意を表するとともに、ねぎらいの言葉を添えたいと思います。
○ 本当にお疲れ様でした。
○ また、グループ労組である、日本興亜労組や日本興亜損調労組の支援やサポートが、この主体的な加盟に大きな力になったのではないかと思います。
○ そのようなグループ労組の支援、バックアップにつきましても、あらためてご慰労と感謝を述べたいと思います。
○ ありがとうございました。
○ グループ各社で働く従業員の労働条件の維持・向上、グループ全体の健全な発展のためには、損保グループ各社にしっかりと機能する労働組合を設置していくことが今後一層重要になってきます。
○ このような重要性を関連会社労組の皆さんのみならず、保険会社労組の皆さんにも正しくご理解いただき、組合設置や損保労連加盟に向けて取り組んでいただいていることについても、あらためてお礼を申し上げたいと思います。
<創造性豊かな働きPT報告>
○ 今日はもうひとつ嬉しいことがあります。
○ 「創造性豊かな働き」見直しプロジェクトチームからの報告です。
○ 私が昨年9月の全国大会での就任挨拶のなかで、「新しいメンバーを迎え、ますます大きくなった損保労連組合員6万3000名全員で『創造性豊かな働き』を進化させていきたい」との思いを伝えて以来、短期間で実に素晴らしい報告書を策定していただいた、座長の泉副委員長はじめPTメンバーの皆さんに心から感謝しています。
○ 報告書の詳細な内容は、後ほど説明することになりますが、報告書を受け取った際、私がとくに素晴らしいと共感した3点について述べたいと思います。
○ 1点目は、多様化した価値観を重視し、「自分たちがどう働きたいか」ということが前面に出ていることです。
○ 従来の「創造性豊かな働き」は、自由化を目前にしていたという時代背景から、今までの働きで自分たちの労働条件は維持できるのか、という危機感が強く、私たちの働きを付加価値の高いものにしなければならないというトーンがかなり色濃く出ていたように思います。
○ このような取り組みをすすめた結果、私たちは自由化・合併再編など、厳しい時期を乗り越え、健全な産業・企業や私たちの労働条件を維持することができました。
○ ただ今後は、自由化・規制改革も第2フェーズへと移り、昨年12月に金融庁から示された「金融改革プログラム」にあるように、異業種からの新規参入を促す規制改革の一層の推進、さらには、銀行・証券・保険など業態間の垣根を越えた金融コングロマリット化などが検討されています。
○ 従来の枠組みにとらわれない自由な発想や取り組みが重要となってくる時期だからこそ、「自分たちがどう働きたいか」という「組合員の思い」をベースに、一人ひとりの多様化した個性・資質・才能・キャリアを最大限生かしていくことが求められてきます。
○ 報告書はまさにこれからの時代にふさわしいものといえます。
○ 2点目は、「こう働きたい、こうありたい」という組合員の思いのうち、「認めあい、支えあい、つながりを感じながら働きたい」が一番はじめに置かれていることです。
○ ユニオンミーティングで意見交換しながら感じたのは、今組合員が一番望んでいるものは、「人と人とのつながり」だということです。
○ 日々効率化を追求し、競争していかねばならない、こんな厳しい時代だからこそ、私たちは同時に「優しさ・いたわり」、「温かみ・温もり」、そして「人と人とのつながり」を強く求めているのではないでしょうか。
○ 自ら成長したい、高品質なサービスや価値を提供したい、社会から信頼されたい、などという思いも「人と人とのつながり」がなければ、「こう働きたい、こうありたい」という理想の姿とはかけ離れてしまうかもしれません。
○ そして、「人と人とのつながり」を重視するうえで、決して忘れてはならないのは「多様化した価値観をいかに認めあうか」ということです。
○ 職場をみれば、パート社員、派遣社員、嘱託社員、再雇用の方など、多様化した雇用形態の人たちが働いており、また、いわゆる正社員であっても多様な価値観をもって働いています。
○ 自分が持っている価値観やこれまでの一般的な価値観にとらわれることなく、一人ひとりがもつ価値観をお互いに認めあうことで、本当の意味で人と人が支えあえることができ、そして「人と人とのつながり」を感じることができるのです。
○ よく企業における資本とは、ヒト、モノ、カネ、そして情報と言われてきました。
○ しかし、忘れてはならないもう一つの資本は、「人と人とのつながり」です。
○ 人と人が認めあい、支えあい、つながりを感じられる職場は、強い信頼や協力に支えられ、それそのものが大切な資本になると思います。
○ これはかけがいのない経営基盤であり、中長期的に組織全体の効率性を高め、そして「持続可能な発展」につながると考えます。
○ 3点目は、組合員の思いの2つめに「変化を前向きに捉え、自らの強みを生かして主体的に働き、常に自らの成長を実感したい」とあることです。
○ 「自らの強みを生かす」重要性に強い共感を覚えました。
○ これは日本社会全般に言えることですが、ここ数年、私たちは、かつて経験したことのないグローバルな競争や急激な環境変化によって、これまで培ってきた良いところを伸ばすというよりも、むしろ改善すべきところや見直すべきところの方に目を奪われがちだったのではないでしょうか。
○ 今、「原点」に立ち戻り、これまで培ってきた良いところや大切にしなければいけないことは何なのか、再認識し、「強み」を伸ばしていくことを重視した取り組みが大切だと思います。
○ そうすることによって、一人ひとりがこれまで以上に「自信」や「誇り」をもって生き生きと働くことができ、その結果、「強み」が「弱み」を飲み込んで、輝かしい成果につながると思います。
○ 進化した「創造性豊かな働き」には、「自信を持ってやっていこう」というメッセージが込められていると感じました。
○ この中央委員会で皆さんが報告書の内容にご賛同いただいたその瞬間から、さらに取り組みを強化していかねばならないと身が引き締まる思いで一杯です。
○ 同時に、進化した「創造性豊かな働き」が今後の損保労連活動にどんなインパクトを与えることになるか、私自身もわくわくしています。
○ 進化した「創造性豊かな働き」によって、損保労連と全単組は、より一層力強く前進し、働く者の「幸せ」を創りだしていくことができると確信しています。
○ この報告書が、私たちがめざす働きとして、組合員一人ひとりの「道標」となるよう、また、損保労連・単組の活動の拠り所となるよう、責任をもって取り組んでいきます。
○ 私の希望を快く引き受けていただき、座長としてリーダーシップを発揮していただいた泉副委員長はじめPTメンバーの皆さん、そして貴重なご意見を多数いただいた組合員の皆さん、本当にありがとうございました。
○ 心よりお礼申し上げます。
<2005春闘にあたって>
○ さて、いよいよ春闘がはじまります。
○ 2005春闘方針については、後ほど論議していただくことになっておりますが、この春闘で何をしたいのか、私なりの考えや思いをお伝えしたいと思います。
<人を大切にして人を生かす>
○ 最近、気になる新聞記事やマスコミ報道が目につきます。
○ それは、「黒字転換し、今期も増益を見込むが、市場の低迷をにらみ、人員リストラで競争力の維持・強化をめざす」というような類の記事です。
○ もし、企業が市場低迷ゆえに人員を削減するというのであれば、人の働きを単なるコストとしかみていないではないかと感じて非常に残念に思います。
○ 一方、世間一般をみれば、企業は一時の危機的状況から脱し、体力を取り戻したものの、雇用はそれほど増えておらず、所得もせいぜい下げ止まり程度、消費も停滞気味であり、企業の業績好調が個人の家計までには波及していないという状況です。
○ このようななか、労働組合が果たすべき役割は何か、真剣に考える必要があるのではないでしょうか。
○ 今こそ「私たちが、働きの付加価値を高め、人にしかできない仕事を生み出し、企業価値を増大させる」、そして「企業が、人を信頼し、人を大切にし、人を生かし、人に投資する」という好循環を従来以上にゆるぎないものにすることが労働組合の極めて重要な役割と考えます。
○ そうすれば、企業はもっと中長期的な視点にたって、持続的に発展していき、そして従業員の労働条件も安定的に維持・向上していくと確信しています。
○ 損保グループ産業においても、今こそ「人が支える高度な知的産業」との「原点」に立ち戻り、より一層高いレベルでの「人を大切にして人を生かす」経営の実践について、労使で徹底的に話しあうことが重要です。
○ 今春闘のテーマは、一言でいえば、「人を大切にして人を生かす」という重要性を今一度、労使で再確認しあい、そのために必要な環境整備を求めるということに尽きると思います。
<企業の社会的責任(CSR)>
○ 春闘方針には、侃々諤々の論議を経て、企業の社会的責任(CSR)の考え方を盛り込みました。
○ なぜ、これを盛り込んだか。
○ それは、CSRに関する取り組みによって、「人を大切にして人を生かす」経営の重要性を労使で再認識しあい、その実践を通じて、従業員と企業の信頼関係を一層揺ぎないものとすることができると考えたからです。
○ 従来の日本型経営では、従業員は企業という社会のなかに存在し、終身雇用・年功序列という安定したシステムによって、大きな不安を感じることもなく、懸命に仕事をすることで業績をあげてきました。
○ これは日本経済の強みでもあったと思います。
○ ところが市場原理や自由化などにより、外部環境が大きくかつ急激に変わり、グローバルレベルでの競争が激化し、それまでの安定した日本型システムが揺らぎはじめました。
○ 企業は市場から高い生産性や効率性を強く求められるなか、生き残りをかけ、「年功序列・企業丸抱え」から「成果主義・自己責任」へと舵をきりはじめ、それによって従業員と企業の関係が少しづつ変容してきたという面があるのではないでしょうか。
○ これによって、プラス面もある一方、マイナス面も発生してきているように感じます。
○ このような状況のなか、私たちは、これまでの日本的経営のなかで培ってきた「強み」や「良さ」は何だったのか、もう一度見つめなおすことが重要です。
○ 私は、「強み」や「良さ」を一言でいえば「人を大切にして人を生かす」ということだと思います。
○ CSRに関する取り組みは、それを再認識し、実践する良い契機になると考えます。
○ そのためには、まず、「企業の社会的責任の担い手はまさに従業員であること」、そして、「従業員が自分の仕事に誇りをもち、生き生きと働き、付加価値の高い働きを実践することができなければ、企業が社会的責任を果たし、持続的に健全な発展をしていくことは難しい」ということを労使で確認することが大切です。
○ そのうえで、付加価値高い働きの実践、すなわち「創造性豊かな働き」を支える環境整備は、企業が従業員に果たすべき重要な責任であることを労使共通の認識にすることが大切です。
○ 企業が、従来以上に「人を信頼し、人を大切にし、人を生かし、人に投資する」ことができれば、従業員の働きから生み出される付加価値はますます増大し、多様な顧客ニーズにしっかりと応え、より質の高い商品やサービスを提供することができ、それによって顧客満足度を高め、ひいては、企業価値の拡大というかたちで株主利益の増大へとつながります。
○ このように、従業員が「創造性豊かな働き」を実践することで、企業をとりまくさまざまなステークホルダーに対して期待される役割をしっかりと果たせば、さらなる従業員への投資へとつながるという好循環を構築することができます。
○ このような取り組みのなかで、経営は、「従業員が会社を支えるかけがえのない財産であり、付加価値の高い働きなくして企業の持続的な発展はない」と再認識し、従業員の無限の可能性に投資するなど、従業員をさらに重視した適切なマネジメントを実践していくと考えます。
○ CSR を一過性のブームや単なる企業のブランドイメージ向上といったPR活動にとどめることなく、組合としてその本質をしっかりと理解し、決して後手にまわることのないよう、先手を打ち、組合活動に積極的に生かし、従業員と企業の信頼関係を一層ゆるぎない確固たるものにしたいと考えます。
○ 従業員と企業の強い信頼関係のなかで、従業員が主役となり、さまざまな社会、すなわち企業をとりまくステークホルダーと真正面から向きあい、期待される役割を主体的に果たしていくことは、「産業・企業の持続的な発展」につながるだけでなく、「産業・企業の本来もつ社会性・公共性」をも高めていくことにもつながると確信します。
<最後に>
○ 「人を大切にして人を生かす」経営の実践ができているか、すなわち私たちが「創造性豊かな働き」を実践できているか、その実態をしっかりと把握し、問題があれば課題の解決に向けて徹底的に労使協議を行う必要があります。
○ この実態把握と課題解決の重要な切り口が2005春闘における取り組み方針の3本柱、すなわち「私たちの働きにふさわしい仕組みの構築を通じた労働環境の改善」、「私たちの働きを評価・処遇する人事諸制度の適正な運営」、「人材を育て生かすマネジメントの実践」なのです。
○ 今、労使ともに求められているのは、基本を大切にして、課題に対し一つひとつ丁寧に、それぞれの役割を誠実に果たし、愚直に取り組んでいくということです。
○ これができれば、どんな難しい課題も解決できないことはないと信じています。
○ そして、そこにこそ労働組合の存在意義があると考えています。
○ 2005春闘が「働く者の幸せ」につながるよう、ともにがんばっていきましょう。
損害保険労働組合連合会 中央執行委員長 梅本 修