保険会社:STORY 4

所属 | 損害 | 職種 | 地域型 |
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年齢 | 40 | 性別 | 女性 |
障壁となる環境変化 |
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○事務単純作業のシステム化 ○商品・サービスの多様化 |
追い風となる環境変化 |
○IT技術の革新による業務の効率化 ○柔軟な勤務形態(シフト、在宅勤務) ○シニア層が活躍する場の拡大 |
POINT
本文中の下線部を参考に、
①~③のポイントを読み取りましょう。




この春から息子が東京の大学に進学し、一人暮らしを始めたため育児からは開放された。一方で、梅雨の時期あたりから郊外の実家に住む母が体調を崩しており、週1回は半日休暇と在宅勤務を組み合わせて、通院に付き添う生活になっている。
10数年前の組合の広報誌に「男女平等参画がさらにすすむ」「柔軟な働き方ができるようになる」という未来の姿が載っていたが、まさか自分が、10名の地域限定社員を束ねる管理職になり、在宅勤務を活用しながら働くなど想像すらしていなかった。電子カルテの普及や電子印鑑・電子署名の導入により、今や自宅でもオフィスで勤務している状況とほぼ同等に、担当案件の資料一式がオンラインで照会でき、数年前まであった在宅勤務中のストレスもほとんどなくなった。

「お母さん、私がお昼ご飯作るから座っててよ」
昼前に病院から実家に帰ってきてから、炊事をこなし、後片付けが終わったのが12時40分。
コーヒーを淹れて一息ついてから、私はカバンからタブレット端末を取り出して13時から始まるWEB会議の用意を始めた。最近の若手はウェアラブル端末を使いこなしているが、私には使い慣れたタブレット端末が一番いい。
もともとこの会議は会社で行っていたのだが、"柔軟な働き方"がクローズアップされ始めたころ、実際に試してみようということで、WEB会議に切り替えることを私が発案したものだ。
在宅勤務や短時間勤務を活用して仕事と育児を両立しているメンバーも多くなり、メンバー全員が出社している日が少なくなった今となっては、チームに欠かせないコミュニケーションの場になっている。
会議終了後、私は翌月のシフト作成に取りかかった。シフトは今日中にWEB上の予定表に反映させることになっている。社内業務のほとんどが在宅で可能となったとはいえ、お客さま対応上、少なくともメンバーの半分はオフィスに在席している必要があり、支障なく効率的に業務がまわるシフトを組まねばならない。
シフトは各メンバーからの希望を考慮して作成するが、必ずしも希望にそえる場合ばかりではない。チームメンバーは性格もキャリアも家庭の事情もさまざまであり、こうした事情にも配慮しながら不満が残らないように調整を図る必要がある。実は、昔からこうした調整は苦手中の苦手だった。そんな私が何とかこの仕事をこなせているのは、苦手意識克服のために敢えて社内調整を要する仕事を引き受け、上司や時には夫にも相談しながら対応してきた経験があるからだ。
さて、来月もいくつか調整が必要な日がでてきた。チーム内で唯一決裁権限を委譲できるベテランのAさんの休暇と、私の午後の半日休暇(母の通院日)が重複している日もあり、この日の至急対応については隣のチームのリーダーに決裁をお願いすることとした。
病欠など突発的な状況を考えれば、決裁を任せられるメンバーが一人しかいないことはチームの喫緊の課題であり、それはすなわち、決裁を任せられるメンバーの育成という人材育成上の課題だ。しかし、その課題もじきに解消するだろう。全国転勤型として経験を積み、定年後再雇用社員に転換したBさんが故郷にある当部に人材育成専任者として配置されてから、部全体のレベルが目に見えて上がってきた。メンバーの成長をより加速させるために、来月からはBさんに定期的な研修をお願いしている。

シフトを予定表に入力し終えると、部屋には強烈な西日が差し込む時間となっていた。自宅では夫が晩御飯の支度に取りかかったころだろう。私は、母にひと声かけてから帰路についた。