保険会社:STORY 7

所属 | 営業 | 職種 | 地域型 |
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年齢 | 30 | 性別 | 女性 |
障壁となる環境変化 |
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○国内損保マーケットの縮小 ○労働力人口の減少 |
追い風となる環境変化 |
○無線ブロードバンドの発展 ○在宅勤務などフレキシブルな働き方の一般化 |
POINT
本文中の下線部を参考に、
①~③のポイントを読み取りましょう。




息子を保育園に預けて帰宅したころには、8時50分を回っていた。
今週は、在宅勤務を今日を含めて2日行う予定にしている。かつては、保育園の送り迎えをする必要があっても短時間勤務しか選択肢がなく、子育てをするママは大変そうだったが、ここ10年で在宅勤務をはじめとするフレキシブルな働き方が男女問わずに一般化し、私たちの働き方は様変わりした。

食卓に仕事道具をならべ、PCの電源をオンにしたのはちょうど9時だった。まずは昨晩届いたメールをチェックし、追加のタスクと実施予定日時を社内イントラの予定表に入力することから仕事をはじめる。
予定の共有は、もともと、外出するメンバーが多い営業の現場で、みんなの予定を合わせることを主な目的としていたが、私は、育児や介護をしながら働く人が増えれば予定を合わせることがさらに難しくなると考え、在宅勤務が一般的になる前から職場で徹底を図ってきた。
さらに私は、予定表の付随機能であるToDoリストにメンバーそれぞれがタスクと簡単な進捗状況を入力することで「業務の見える化」ツールとして活用することを発案し、職場で実践してきた。これにより、担当者不在時の他部署からの照会への回答もスムーズになったほか、担当者間で業務が重複することもなくなった。
はじめのうちはコツがつかめずに、かえって業務の重複が発生したりもしたが、そのつど再発防止策を話しあい、解決に向けた取り組みを重ねてきた。メンバーと顔を合わせる機会が少なくなった現在において業務をスムーズにすすめられる態勢が構築できたことは、こうした取り組みの成果だ。
しばらくの間、社内通達のチェックや稟議書の作成を行っていると、タスク開始時間を知らせるアラームが鳴った。鈴木電気に提案する総合コンサルティングプランを作成する時間だ。今回は、会社の保険プランのほかに、先代の介護で大変だという社長個人向けに、当社のグループ会社が最近始めた介護サービスも紹介しようと考えている。
営業を始めた当時はグループ会社の商品やサービスはほとんど知らなかったが、課内で続けてきた勉強会のおかげで、今ではこれらをお客さまに提案し、契約に至るケースが増えている。
「汎用企画書の加工は、Cさんにお願いしようかな」
Cさんはフィリピン人のスタッフで、平易な文章で業務の意味と最終的な目的を示せばしっかり対応してくれるので頼りになる。予定表を確認するとCさんは、打ち合わせと昼休みでしばらく席を外す予定になっている。
私は企画書作成に区切りをつけ、少し早めに休憩に入ることにした。いつも混んでいる近所のカフェに行くチャンスだ!
食後のデザートと紅茶をいただきながら、読書タイム。至福のひととき。こうした平日に得られる非日常感は、午後からの活力につながる。
帰宅後、私は再びPCに向かい、インターネット電話を職場に接続した。
「Cさん?お願いしたいことがあるんだけど…」
依頼の主旨と詳細は追ってメールすることをCさんに伝える。ここ最近、外国人の同僚が周りにも増えた。みんな日本語には堪能だが、日本独特の"あうんの呼吸"はなかなか通用せず、ロジカルシンキングやロジカルライティングの必要性はますます高まっている。今から思えば、私が営業を始めたころの課長がロジカルシンキングに厳しい人だったのは幸運だった。課長の見よう見まねからはじまり、ハウトゥー本や通信講座での自己研鑽を重ねたことで、ロジカルシンキングを身につけてきた。また、こうしたスキルを後輩にも伝えることで、職場全体がレベルアップし、些細な行き違いが減るなど業務の効率化にもつながっている。

明日は夫が在宅勤務日で息子の送り迎えの当番になっており、私は一日、代理店さんやお客さまを複数訪問する予定にしている。職場にも寄って、Cさんに不明点がないか聞いてみよう。Cさんにメールを送信し終わった私は、明日の訪問に向けて、代理店経営に関する資料とお客さま向けの企画書の作成に取りかかった。
ふと気づくと時計の針は17時に近づいていた。息子のお迎えの時間だ。PCをシャットダウンし終わる頃には、頭は家庭モードに切り替わり、夕食のメニューを考えていた。