損調会社:STORY 2

所属 | 損害 | 職種 | 医療アジャスター |
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年齢 | 30 | 性別 | 男性 |
障壁となる環境変化 |
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○国内損保市場の縮小 ○技術革新による自動車事故の減少 |
追い風となる環境変化 |
○医療費の高額化にともなう第三分野の保険ニーズの高まり ○高齢者増加にともなう治療遷延・重度後遺障害事案の増加 ○法曹人口増加や権利意識の高まりにともなう交通事故訴訟の増加 ○医療技術の高度化にともない専門知識を持つ人財が必要となる |
POINT
本文中の下線部を参考に、
①~③のポイントを読み取りましょう。




朝、私が自席に腰をおろすやいなや、私が昨年指導担当をしていた2年目の医療アジャスターであるAさんが話しかけてきた。

「今朝の新聞に、交通事故の件数がまた減少したって書いてありましたね」
「おお、見た見た。運転アシスト機能などの技術革新のおかげで、追突を中心に事故が大幅に減少しているからね。自動車事故の医療調査の件数も、以前と比べるとだいぶ少なくなったよ」
「このままいくと、いずれ自動車事故の医療調査はゼロになってしまいますかね」
「ずいぶん極端だね。いくら技術がすすんでも交通事故をなくすことは難しいだろうし、被害者が高齢者の場合、シビアな病態になるケースが多いことは変わらないと思うよ」
特に高次脳機能障害のように後遺障害等級が上振れする可能性のある事案や、病態の悪化に既往症の影響が関与している事案については依然として慎重な対応が求められる。また、法曹人口増加の影響かそれとも権利意識の高まりなのか、弁護士委嘱事案も増えてきている。
「事案担当者からの期待にこたえるためにも、医療分野はもちろんのこと、社会保障制度、判例の動向など、専門的で幅広い知識の習得が必要不可欠だろうね。医療分野の知識は、医療保険事案に対応するうえでも、ますます重要になってきている」
「今月も医療保険の勉強会が開かれるようなので、そこでまた勉強します」
損調会社と保険会社とが経営統合しはじめたころ、自動車事故が減少傾向にあったこともあり、いずれアジャスターの業務も保険会社が担っていた領域にまで広がることを予測し、保険会社のメンバーと連携して双方の業務に関わる知識の勉強会を始めた。数年前からは医療保険事案の調査も手がけるようになり、火新センターのメンバーに講師をお願いし、四半期に1回のペースで医療保険に関する勉強会が開かれている。最近では医療保険の調査もスムーズに対応できている。一方で医療アジャスターが講師を務める火新センターメンバー向けの勉強会も継続しており、お互いのコミュニケーションアップ、自らすすんで学ぶ風土の醸成にも一役買っている。
「勉強する機会は何も会社の研修やセンター内の勉強会に限られないよ。例えば大きな病院では医療関連の無料市民講座が開かれているし、生活習慣病の予防法、スーパードクターと呼ばれる優秀な医師、介護保険制度を特集したテレビ番組もたくさんあるよね。こういうものは幅広い層を対象にしていて説明が分かりやすいから、僕も相談を受けた時にワンポイントアドバイスとして、結構使ってきたよ」

私が入社したての頃、尊敬する先輩アジャスターをまねして始めた新聞の医療関連記事のスクラップは、今では10冊を超えるファイルとなり、私の貴重な財産となっている。昨年、同じように新聞記事のスクラップを始めたAさんも、いつの日か続けてよかったと気づくことだろう。アンテナを高くしていかに情報を集められるか、その小さな積み重ねが5年・10年という年月で大きな差となる。
Aさんは入社2年目ながら貪欲に知識を吸収しようという姿勢があり、見込みがある。次の質問を投げかけようとするAさんの後ろから、今度はセンター長から「そろそろいくぞぉ」と声が掛かった。
部内プロジェクトチームの会議が始まる時間だ。現場の声を新保険商品の開発につなげようと1年前から取り組んでいるPTである。今日の会議では私が医療アジャスター目線からの課題について発表することになっている。私はネクタイの結び目を整え、会議室に向かった。