システム・事務会社:STORY 1

所属 | システム会社 | 職種 | - |
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年齢 | 25 | 性別 | 女性 |
障壁となる環境変化 |
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○在宅勤務の一般化(つながりの希薄化) ○保険販売数の減少によりシステム投資額が減少すること |
追い風となる環境変化 |
○保険会社のシステム化・自動化ニーズがさらに強まること ○社会全体の育児・介護などに対する理解浸透、意識向上 |
POINT
本文中の下線部を参考に、
①~③のポイントを読み取りましょう。




「今日はお父さんがお迎えに来るからね」
自宅の最寄り駅近くにある保育園で4歳の娘に、今日のお迎えの当番が夫であることを伝え、朝10時に時間差出社した。育児支援を社会全体で担うことへの理解度が深まったこともあり、出産後の多くの女性社員が育児休暇制度を利用した後に職場復帰し、育児を夫婦で分担しながら仕事と両立して働きつづけている。私も3年前に職場復帰し、現在は自動車保険システムのリーダーとして働いている。
デスクにつき、仕事道具を広げていると課長から声をかけられた。
「今日は水曜日だから、早帰り出来るように意識して仕事してね」
彼女は育児と仕事を両立させてきたワーキングマザーの先輩だ。育児のために短時間勤務制度を活用していた時から、システムのスペシャリストとしての存在価値を限られた時間内に発揮することを常に考え、そのために、少しの空き時間も無駄にせず自己研鑽に励み、人並み以上の仕事をこなしていた。育児にも仕事にも全力投球するその姿は私が出産する前から理想としてきた未来の自分の姿であり、業務においても日々何か学べる事ことはないかと考えながら仕事を進めてきた。今でも昼休み時間に話してくれる、短時間勤務当時の体験談や情報はとても興味深い。
「〇〇さん。打ち合わせの時間ですよ」

私の所属している課では週に最低1日はチーム全員が集まる機会を設けて、情報交換や進捗状況の確認を実施することにしている。
ITシステム技術の進歩により、シンクライアント端末・タブレット端末を利用することで、いつでもどこでも会社のメールや資料を確認することが出来るようになり、当社でも週1回の在宅勤務が実現可能となった。みんな、自宅での勤務に最初は戸惑いもあったが徐々に慣れてきて、現在は在宅勤務中の上司・部下間のやりとりや大人数の会議でさえもタブレット端末のカメラ機能を使用してスムーズに行えるようになった。
しかし、いくら技術の進歩が進んでも、組織内のコミュニケーションを高めるには、対面で話すことが最も効果的であることは変わらない。この会議は、メンバーの在宅勤務や短時間勤務が増え始めたころに、会って話すことの必要性を課内で共有し、私の提案で始めたものだ。その結果、私の課はチームワークを発揮し、業務効率化や開発生産性を向上させ続けてきた。最近では、過去に会議を全てWEB化したこともある他の課でも、週に一度は対面の会議を開くようになってきた。
打ち合わせの後、課長に会議室で呼び止められた。
「〇〇さんには、来月から海外システムの開発チームを兼務してもらうことになりました。よかったね!将来を見据えてやることをやっておけば、努力はムダにならないんだね!」
5年ほど前から、私は週に一度の在宅勤務で自由に使えるようになった、通勤にかかる往復3時間を利用して、自宅で英会話のEラーニングを始めた。英会話を始めたきっかけは飛躍的な成長を遂げている海外システム開発事業に将来携われるようになるため。その努力が認められ、ようやく希望が叶ったのだ。

その後、私は足早に自席に戻り、残務の整理に取り掛かった。
保険会社からのシステムへの期待・ニーズは年々強まっているが、自動車技術の向上による事故の減少や、少子高齢化により保険料収入が減少していることもあり、システム開発に投資できるコストは年々減少している。しかしながら、最新システム技術を導入した『営業活動を推進するシステム』や『お客さまと保険会社をつなげる新たなシステム』、『社内の事務作業をさらに効率化するシステム』などシステムへの期待は大きい。こうしたシステムを構築する為にはIT業界を見渡せる広い視野とシステムスキルが必要である。
若い頃から積極的にシステム業界のセミナーや研究会に参加してきたこともあり、新しく参画したプロジェクトで構築したシステムに対して、保険会社から高い評価の声が寄せられることが増えてきている。これからも最新のシステム技術動向を注視して、時代のニーズにあったお客さま目線のシステムを構築しなければならないと感じる。
資料を整理していると、ちょうど5時になった。
頭の中は"システムを作ること"から"夕飯を作ること"に変わっていた。