システム・事務会社:STORY 4

所属 | 事務会社 | 職種 | - |
---|---|---|---|
年齢 | 35 | 性別 | 男性 |
障壁となる環境変化 |
---|
○計上業務の縮小 ○コストの安いアジア圏への事務部門の外注 |
追い風となる環境変化 |
○正社員が減少し、非正規社員や保険会社からの出向者が増加する ○再雇用の要員が増加し、労働力の活用についての整備がすすむ ○多様な雇用形態・時間で働く人間が増え、ダイバーシティの意識が高まる |
POINT
本文中の下線部を参考に、
①~③のポイントを読み取りましょう。





定年後再雇用社員のSさんが席についたのを見はからって、私は声をかけた。
「Sさん、パートさんへの研修の件なんですけどね…」
Sさんの経験に裏打ちされた研修は、今や私の所属するグループの大半をしめるパート社員からも「わかりやすい」「ためになる」と好評だ。ここ10年で職場の定年後再雇用社員は大幅に増えたが、経験豊富な彼らの強みを生かしていくことで、組織の力は大きく向上する。
私のグループでは、Sさんをはじめとした多様なメンバーがそれぞれの持ち場で最大限の力を発揮し、また互いの強みを生かして組織力の向上に寄与している。担当者時代から、これからの時代はダイバーシティマネジメントがさらに重要になると考え、書籍を読みあさったり、外部セミナーに参加したり、他業界に身を置く学生時代の旧友と(趣味と実益を兼ねて居酒屋で)意見交換したりと、知識の習得に努めてきた。もちろん仕事は忙しかったが、勉強の時間は、自らの作業のマニュアル化や社内事務フローの整備により業務を効率化することで捻出した。こうして身につけた知識・スキルが、マネージャーとなった今、役に立っていると実感する。
Sさんとの打ち合わせを終え、私は足早に会議室に向かった。営業店サポートチームのミーティングの時間だ。
「ごめん、ごめん、前の打ち合わせが長引いちゃって!」
居並ぶメンバーの横をすり抜け、私は会議室の一番奥の席に腰をおろした。
営業店サポートチームは5年前に設置された部門横断のプロジェクトチーム(PT)で、大型代理店の事務体制構築支援事業の検討を行っている。私の提案で設置され、私がPTのリーダーを務めている。
現在では、多くの保険種目で契約締結から計上までが代理店で完結するようになり、また、代理店で完結しない事務業務についても多くがアジア圏をはじめとする海外に外注されて、かつて事務会社が担っていた業務は大幅に減った。入社以来、こうした業務が目にみえて減っていくなかで、私は「事務会社ならではの強み」を作る必要性を漠然と感じるようになっていたが、具体的な打ち手を思い描けずにいた。そのころから、私は保険会社への出向を希望するようになった。具体的な打ち手を描くためには、自らの視野を広げるとともに、委託元である保険会社の立場から事務会社を見つめる必要があると考えたからだ。出向の希望はほどなくかなえられた。今からちょうど10年前のことだ。
出向先では、話される言葉や仕事のすすめ方、果ては飲み会での作法まで、10年以上過ごした会社とまったく異なる文化に戸惑ったが、そのような状況のなかでも意識的に、保険会社の営業現場にどのようなニーズがあるのかを探った。そのために、代理店の制度やシステムについても勉強を怠らなかった。出向の4年間で、保険会社における大型代理店での事務体制の構築へのニーズや、事務体制の構築に苦労する保険会社の営業現場の実態を把握でき、なによりそうした生の情報を教えてくれる人脈を築くことができた。それが、このPTの立ち上げにつながった。

このPTが立ち上がった時には、PTの運営や、経験したことのない代理店とのやり取りに不安を口にする社員もいないわけでなかったが、今では代理店や保険会社の担当者からの「ありがとう」の一言を聞くために、将来を見据えた提案をするための検討を一丸となってすすめている。
環境に迫られて自らを変えるのではなく、環境変化に先んじて自ら変わることが働きがいにつながる。PTメンバーにもその考え方が根づいてきたようだ。