システム・事務会社:STORY 5

所属 | システム会社 | 職種 | - |
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年齢 | 25 | 性別 | 男性 |
障壁となる環境変化 |
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○企業戦略に関するスキルおよび高度なITスキルを必要とする要員の増加 ○経営とITおよび現場とITの橋渡し役の不足(ノウハウ・スキルの欠如からの回復) |
追い風となる環境変化 |
○システム領域の明確化(インフラを中心としたベンダー利用)による、システム開発への要員投下 ○グループ会社横断での事業領域拡大 |
POINT
本文中の下線部を参考に、
①~③のポイントを読み取りましょう。




今日は朝からグループ各社のメンバーが集まるIT戦略会議が開催される。
もはや会議の主流はWEB会議であるが、各社の事業戦略や、それに付随するIT戦略についての論議では、しばしば白熱した応酬が繰り広げられ、WEB会議では論議展開についていけなくなる恐れもあるとの判断で、今回はFace To Faceの会議を選択した。
今や、システム会社はグループのIT戦略を統括する立場にあり、この手の会議においては必然的に事務局を務めることとなる。初回の今日は、各グループ会社の主張を把握しITをどのように活用するか検討の礎を築くことが、最低限のゴールであるが、キレ者揃いの参加者の折り合いをどうつけるか、ファシリテーターである私の腕の見せ所だ。
今から思えば、「システム会社がグループ全体のIT戦略策定を統括するようになる」が口癖だった憧れの上司Aさんの言葉を信じ、仕事の合間を縫ってスクールに通いITコーディネータの勉強をしておいて良かったと内心胸をなで下ろしているが・・・
今回の議題は「代理店システムの改定」である。
私は飲みかけのコーヒーを片手に会議室へ向かった。会議室に入ると、開始時刻まで時間があるものの全員が揃っている。

「お待たせしました。みなさんお揃いのようですので、資料の確認と自己紹介から始めましょう」
私は、そう切り出した。全員が一斉に持参してきた会社貸与のタブレット端末に視線を落とし資料を確認する。ペーパーレスによる経費削減のひとつである。
会議の出席メンバーは、ホールディングスの経営企画メンバーを始め、各社企画部門のシステム担当、生損保の営業推進担当など多岐にわたる。ここで展開される論議をファシリテートするには、IT分野だけの知識・スキルではもはや通用しない。より幅広い知識・スキルを習得するために積極的に社内のキャリアトライ制度に応募し、商品開発部門や営業店での勤務経験を積んできたことが自分を真の「保険会社グループのシステムのプロフェッショナル」にしたのだと実感している。
議場ではマイナンバー制の民間活用の拡大が認められたことにともなう、代理店システムの改定について論議が交わされていた。規制の解釈、コスト、ユーザビリティなどの論点についてメンバーの主張が交錯するなか、私は論議をファシリテートし、次回の会議への方向性をつけて会議を収束に向かわせた。
会議終了間際に、スケジュール感に関する質問が飛んできた。以前の開発であれば、要件が増える毎に開発が複雑化し費用も時間も要していたが、ビジネスロジックとシステムロジックを分離するルール・エンジンの進化により、要件定義がしっかりできればプログラム作成は比較的容易に作成できるようになっている。ルール・エンジンについては、積極的に外部セミナーを受講するなどして、今では自在に使いこなせるようになっており、当然、求められる成果物しだいではあるものの、従来と比べれば大幅に短納期で対応可能と回答した。隣に座るネットワークおよびデータベースの専門家も同意見であった。
会議終了後、海外システムの担当者から声をかけられた。

「コストありきでアウトソースを活用してきたが、国内損保での成功体験が生かし切れていないシステムとなっている。何か対策はないか」との相談だった。
私は、自社の強みを生かすためには、やはりノウハウおよびスキルの社内留保が必要であること、また、ベンダー依存の体質を改め、グループ会社としての付加価値向上に向けた取り組みを実践するためにも、利用部門とアプリケーション開発部門の連携が必要であることなどを力説した。そして、プロジェクトマジメントの経験豊富なAさんを思い浮かべながら、予定していた自分の仕事も忘れて、具体的な対応策について説明し始めていた。